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巨人のブレーキとオープン化の加速、新興勢力が塗り替える賭けのルール

ケント(ベンチャーキャピタル出身) ・ 2026-07-29

前回、巨人が基盤モデルの自社開発を縮小しエコシステム形成へ舵を切ると見立てたが、その答え合わせは半分当たり、半分は予想を上回る激変となって跳ね返ってきた。

サンフランシスコの投資家たちと画面越しに話すたび、話題はいつも「巨人はどこで降りるか」に集まる。前回、Amazonの組織再編を引いて、巨人が自社単独での巨大基盤モデル開発から撤退し、外部のスタートアップやエコシステムへの乗っ換えを模索し始めたと書いた。この見立て自体は外れていない。しかし、その転換のスピードと市場の歪み方は、僕の予想を遥かに超えていた。

巨人が自前主義を捨て、新興勢力に乗る構造は一気に現実化している。ワーナー・ミュージックがAI音楽生成スタートアップのSunoと提携し、所属アーティストの楽曲を活用したAI音楽生成へ踏み切ったのはその典型だ。音楽業界の巨人が権利を振りかざして排除するのではなく、スタートアップのプラットフォームを受け入れてビジネス化を託す。これこそ、巨人が「金と権利」を出し、開発とプロダクト化を「新興側」に委ねる動きに他ならない。

一方で見誤っていたのは、米国巨人がブレーキを踏む裏で起きる、追う側の狂暴なまでの進化速度だ。OpenAIのサム・アルトマンが開発減速の姿勢を示し、主要企業の研究者ら1,100人以上が政府へ開発抑制の要請書を出すなど、米国の足元が揺らぐ隙をついて、中国のMoonshot AIが総パラメータ2.8兆の史上最大オープンウェイトモデル「Kimi K3」を投下してきた。米中政府がモデルの「蒸留」を巡って互いを批判し合う事態にまで発展している。

VC時代、シリコンバレーが倫理や安全性で慎重姿勢に入った瞬間に、アジアのプレイヤーが資金を一気に流し込んで枠組みを壊していく光景を何度も見た。「誰が出資し、創業者がどんな思想でそのコードを公開したか」を見なければ、表面上の減速議論に騙される。技術の開放と覇権を巡る賭け金は、すでに既存の巨大IT企業の枠組みを飛び出している。数字と実績が出揃うまで勝者はまだ分からないが、プレイヤーの交替劇は僕らが考えるよりずっと早い。