AgentforceLab
Salesforce でエージェントを作る人のための面です。業務単位の設計レシピ、リリースごとの差分、導入事例に出た数字、他のエージェント基盤との比較を、公式ドキュメントと収集記事を根拠に置いています。
Agentforce の作り方
「〜したい」から引く索引 27 項目。編集部が公式ドキュメントを読んで作りました(最終確認 2026-08-01)。2026 年 4 月に Topics は Subagents に改称されています。
① 形を決める
エージェントに何をさせるかを、仕事の単位に割る段。ここを飛ばすと後の全部がぶれる。
- エージェントの守備範囲を決めたい → Subagents(旧 Topics)。「返品の相談」「配送状況の確認」のように、仕事(jobs-to-be-done)の単位で割る。1 つの Subagent が、分類のための説明・扱う範囲・指示の 3 つを持つ。
- やってよいこと・いけないことを決めたい → Instructions(Subagent と Action の両方に書く)。自然文で仕事の中身を書く場所であり、同時に踏み越えさせない線でもある。「この条件なら人に回す」もここに書く。
- 社外向けか社内向けかで作り分けたい → Service Agent / Employee Agent。出せる場所が違う。Employee Agent は Lightning・Salesforce モバイル・Slack・Web チャット、Service Agent は電話・メール・メッセージング系。
② 自社のデータを見せる
ここが無いエージェントは一般論しか言えない。逆に広げすぎると、見せてはいけないレコードまで根拠に使われる。
- Salesforce の中にあるデータを参照させたい → 標準・カスタムオブジェクト(社外は Salesforce Connect の外部オブジェクト)。既にある取引先・商談・ケースをそのまま根拠にできる。追加の基盤が要らず、実データとの時差も出ない。
- PDF や手順書などの文書に答えさせたい → Agentforce Data Library。文書を入れると、Data 360 への取り込み・マッピング・検索索引・retriever までを自動で用意する。作った索引は「ナレッジで答える」アクションの中身になる。
- 何をどう引くかを自分で決めたい → カスタム retriever。参照先・絞り込み・取り方を明示的に決められる。既定の引き方では関係ない文書が混ざる場合の逃げ道。
- 基幹システムなど Salesforce の外にあるデータを使いたい → MuleSoft の API / コネクタ。ERP や SaaS を API として繋ぎ、エージェントの参照先にする。Salesforce に写しを作らずに済む。
③ 業務を動かす
エージェントの実力は文章力ではなく、ここに何を差せるかで決まる。読むだけの部品しか無いエージェントは要約しか返せない。
- コードを書かずに処理をさせたい → Flow(自動起動フロー)をアクションにする。既に業務で使っているフローをそのまま渡せる。設定担当だけで完結する。
- 独自のロジックを実行させたい → Apex(@InvocableMethod / Apex REST / AuraEnabled)。既存の Apex 資産を、そのままエージェントの手足にできる。REST クラスは OpenAPI が自動で作られ、API カタログに載る。
- コードを書かずにデータを引かせたい → Named Query アクション(Setup で SOQL を定義)。Apex を書かずに、決まった問い合わせだけをエージェントに開放できる。範囲が固定されるぶん事故が起きにくい。
- 決まった形式で文章を作らせたい → Prompt Template(Prompt Builder)。要約・翻訳・分類・下書きのように、出力の形が決まっている仕事はここに寄せる。レコードの項目を差し込める。
④ ぶれを止める
この段が Agentforce のいまの中心。「どこまでを言葉で任せ、どこからを決め打ちにするか」を線引きする。
- 毎回同じ順番・同じ条件で動かしたい → Agent Script(Agentforce Builder の記述言語)。自然文の指示(| で書く)と、条件式による決め打ち(-> で書く)を 1 つの台本に混ぜられる。業務ルールをモデルの解釈に委ねなくて済む。
- 会話の途中の状態を覚えさせたい → Agent Script の変数。モデルの文脈記憶に頼らず、いま何が確定しているかを変数に持つ。長い会話でも前提が消えない。
- モデルに考えさせる範囲を限りたい → Agent Script の reasoning instructions。「ここは考えてよい」「ここは決めたとおりに実行する」を台本の中で宣言できる。任せる範囲が図として見える。
- エンジニア以外も触れる形にしたい → Agentforce Builder の 3 つの書き方。自然文で会話しながら作る / キャンバスでブロックを置く(/ で式、@ で部品を差す)/ 台本を直接書く、の 3 通りで同じものを編集できる。
⑤ 出す場所を決める
同じエージェントでも、置く場所によって必要な設定と関係者が変わる。
- Slack から使わせたい → Agentforce の Slack 連携。社内向けエージェントの入口として、いちばん摩擦が少ない。既に人がいる場所に置ける。
- 顧客からの問い合わせを受けさせたい → Service Agent(メッセージング・チャット・電話・メール)。既存のチャネル設定に載る。人へ引き渡す条件を決めておけば、難しい件だけ人に回せる。
- 自社のアプリやサイトに埋めたい → Agent API(ヘッドレス)。Builder や Setup の画面を使わずに、API 越しに呼び出して任意の画面に載せられる。Web・モバイル・音声・他社のエージェント基盤の上でも動く。
- 外部の AI から Salesforce を触らせたい → Salesforce の MCP サーバー(ホスト版 / 自前ホスト)。MCP に対応した AI(Claude など)から、Salesforce の機能を道具として呼べる。Slack 側にもホスト版がある。
⑥ 確かめる
指示文を 1 行変えると別の Subagent の挙動が動く。人手で試すやり方は、仕事の単位が 10 を超えたあたりで破綻する。
- まとめて回帰を見たい → Agentforce Testing Center(Test Suites)。数十〜数百の想定問答を一度に流せる。CSV で自分の台本を持ち込むこともできる。
- テストを書く手間を減らしたい → テストケースの自動生成。Subagent とアクションの構成から想定問答を作れる。ナレッジ文書から Q&A 形式のテストも作れる。
- 何をもって合格とするかを決めたい → 評価項目(accuracy / 完全性 / 一貫性 / 簡潔さ / 遅延 / 指示への忠実さ、正しい Subagent とアクションを選べたか)。「それらしい文章か」ではなく、選んだ道筋が正しいかまで見る。独自の基準はテスト API で足せる。
⑦ 運用して直す
本番に入ると「なぜこの答えになったか」を辿る必要が出る。経路が見えないエージェントは、直せないエージェント。
- おかしな応答の原因を追いたい → Agentforce Session Tracing。1 回の会話の中で起きたことを全部見られる ―― 推論エンジンの実行、呼んだアクション、プロンプトの入出力、エラー、最終応答。
- 本番の品質を継続して見たい → Agentforce Observability(エージェント分析・カスタムスコアラー)。1 件ずつの追跡ではなく、傾向として崩れていないかを見る。独自の採点軸を足せる。
⑧ コードとして持つ
画面で作ったものは、画面でしか直せない。版管理と環境間の移送が要るなら最初からこちら。
- エージェントを Git で管理したい → Agentforce DX(Salesforce CLI + VS Code 拡張)。エージェントの設計(Agent Script のファイル)を手元に取り出し、組織へ配備し、組織側の変更を引き戻せる。メタデータとして扱えるので版管理に載る。
- 画面を一切使わずに作りたい → ヘッドレス開発。IDE や AI コーディングツールから作り、API で動かす。Builder と Setup を通らずに完結する。
- AI コーディングツールに Agent Script を書かせたい → Agent Script ドキュメントの一括ダウンロード。仕様が Markdown で配布されている。AI の道具に読ませる前提で用意されているので、我流で要約したものを渡すより確実。
リリース差分
Winter '27(2026-10)
- Slack AIの提供開始 ― Slack AIが提供開始され、スレッドやチャンネルの要約・検索機能が利用可能に。コミュニケーションの効率化を支援する。(効くのはSlackの利用者)
Summer '26(2026-06)
- Salesforce Foundationsの無料機能 ― Salesforce Foundationsの無料機能を利用できるようになりました。(効くのは既存顧客)
- インドのAWS MarketplaceでAgentforceの提供を開始 ― インドのAWS MarketplaceでAgentforceを含むSalesforce製品の提供を開始(効くのはインドの顧客企業)
- B2C Commerceの意図駆動型ショッピング体験 ― B2C Commerceの最新リリースで意図駆動型ショッピング体験機能が提供(効くのは顧客)
- 自律型AIチームメイト「Coworker」発表 ― Salesforce上でデータ分析から業務アクション実行までを自律的に行うAIチームメイトが提供開始。CRM領域の自動化を推進する。(効くのはCRMの運用担当者)
導入事例の数字
| 組織 | 業務 | 出た数字 |
|---|---|---|
| ジャロック | 営業活動 | 15ポイント向上 受注率 / 80%削減 報告書の作成時間 / 5%向上 商談化率 |
| Tom Tailor | 顧客との関係性構築 | 数字の記載なし |
| 敷島住宅 | AI活用推進と顧客体験向上 | 数字の記載なし |
| Surpass | システム構築業務の生産性向上 | 数字の記載なし |
| ソラシドエア | 社内コミュニケーション | 数字の記載なし |
| TTEC | カスタマーサポート | 数字の記載なし |
| 近畿大学 | 学生とのコミュニケーション | 数字の記載なし |
| Compass Working Capital | ファイナンシャルコーチング | 数字の記載なし |
| Vivekananda Hospital | 患者体験の統合 | 数字の記載なし |